
プロジェクトと保守運用は、日常と非日常とを説明してきました。
非日常が終わると、新たな日常がスタートし、それが保守運用の状態となります。
このように説明すると、すべての関わる人が日常から非日常となり、また日常に戻るというイメージにも捉えられますが、実際は、日常という保守運用状態は継続していますので、ITシステム全体運営から見ると、一部の人や一部の時間がプロジェクトに費やされ、新たな日常に変化していくということになります。
プロジェクトとは
プロジェクトは一定期間に一定リソースを費やして達成すべきものです。
プロジェクトというくらいですので、何か日常に変化をもたらすものと思っていいでしょう。
変化をもたらすということは、それだけの知見を持った者が参画しないと達成しえないことが多いと言えます。
保守運用とは
保守運用は、日常と表現しました。ITシステムの日常的な何等かの作業・タスクの積み重ねということなります。
しかし、保守運用はそのように簡単に言えてしまうほど単純なものではありません。
なぜならば、同じ作業を繰り返すような単純なものではないからです。
障害発生時は、日常とは言えません。突然緊急タスクが発生したということになります。
また、変更要求への対応があります。変更は慎重に対応する必要があります。
つまり、実際は様々なタスクが発生するプロジェクトが多く積み重なっているとも言えます。
プロジェクトと保守運用の両方をうまく進めるには
保守運用とプロジェクトは分けて実行されるよう組成されることが多いかもしれませんが、プロジェクトが現行ITシステムに関係するものであれば分断させると知見がうまく活かせず、プロジェクトがうまく進まないことがあります。
また近年ITエンジニアは不足傾向ですので、現行保守運用を問題なく進めながら、プロジェクトも進めるというのは、リソース上難しいことが多いのではないでしょうか。
プロジェクト×保守運用統合マネジメントの手法
保守運用を問題なく進めながら、プロジェクトも進めていくには、そのためのマネジメント手法が必要となります。そして、その手法を有効に運用することで、離職は出ません。
なぜならば、一言でいうと、常に貢献感と達成感が出るのと同時に、会社にいる意義を感じることになるからです。
案件・タスクの一元マネジメント
まず、マネジメント範囲において、案件やタスクのすべてが一元マネジメントされている状態にすべきです。
タスクはプロジェクトの中には無数に発生しますので、単位は調整することになりますが、人が担当する範囲と決めておくと、ある程度粒度は決まってくるでしょう。
中には保守運用における問い合わせ1件という単位のタスクも存在します。しかし、小さく見えるものであっても、多くの人と調整し解決すべきこともあるので、一つのタスク、極端に言うとプロジェクトとも言えるかもしれません。
それらは、難易度や大きさはさまざまではあるものの、達成しなければいけないことには違いがありませんので、まずは一通り並べて、その進捗状況が確認できるようにします。
案件・タスクを誰が実施しているかが重要
案件・タスクは誰かが実行しないと完成しません。
よって、誰が実行しているかをマネジメントできるようにします。
複数の人が関わることもあるでしょうが、関わり方がわかるようにします。できる限りタスクを担当している人が分かれるように、タスクを細分化しているほうがいいでしょう。
そして、案件・タスクの切り口で進捗が見えるのと同時に、かかるリソース(工数)がわかるようにします。
案件・タスクの切り口では、期限・進捗・工数が見えてくることなります。
工数については、実際はタスク単位ですべて計上するのは困難なことも多いので、集計できる単位にする工夫は必要です。
次に、人の切り口でも見られるようにします。
あるタスクの進捗が遅れていることに対して、そのタスクの解決策だけを考えても解決になれないことがあります。というのは、実行している人が、別なタスクを多く抱えているのが原因だからです。
チーム全体が個々のポジションを踏まえて最適化されていることで成果が出る
案件・タスク誰がどのくらい進めているかを一元マネジメントすることを説明しましたが、これはあくまでもテクニックにすぎません。
実行するにはある程度労力もかかるため、運用が的確にされるまでも苦労はしますが、ただ実行されていても何も見えてきません。
有効でないとメンバが判断すると、最悪離職まで考えるようになってしまうでしょう。
つまり、やっていることが報われないといけません。
かかる工数については、実際は複雑な面があります。それは、タスクの量と質によるものです。質と言っても難易度を考えていいでしょう。
そして、人からの見方では、生産性があります。生産性と一言で言っても、経験が必要なことなのか、経験がなくても類似した経験が必要、人脈が必要、など結果的に生産性に繋がるパラメタが多く存在します。
一元マネジメントされただけではなく、全体としてこなすべきタスクの状況と、リソースが最適になるよう、日常的に調整されるようになっていることが望ましいです。
個々の人は、生産性や量と質のような定量的に表現できる機械ではありません。実際は、価値観を持っています。それらを踏まえて、個人のポジションが認識できることが重要です。
離職者をゼロにするマネジメントとは
ITエンジニアならではの評価制度
人事制度はエンジニアの離職防止には必要な要素です。評価制度が存在し、しかるべき報酬が受けられると感じられるようになっていることは、非常に重要です。
エンジニアは売上単価が相場としてわかっていることが多いため、自分の報酬への感想は何等か相場的に持っている可能性が高いです。
相場単価と社内の位置づけ・役割を踏まえて、公平に評価されるような制度設計と運用が会社としては必要でしょう。
年次が上がるほど、位置づけは上がり、役割は重くなっているはずです。
そして、できることと実際やっていることも結び付ける必要があります。
やっていることは難易度も加味される必要があります。
多くはランクづけされているでしょう。ランクの要素と実績成果の要素がどのように評価され、報酬となるのかを明確にしましょう。
しかし、もっと重要なことは制度があることに加え、現場で効果的に運用されることです。
すべての要素を加味して公平にするのは、かなり困難であるからです。
スキルおよび実績評価の方法
会社としての制度設計がされているとして、案件をこなしていく上ではスキルを把握することとともに、どれだけこなしたか、つまり実績を評価できるようにする必要があります。
スキルはエンジニアとしてはスキル標準のようなものがあるので参考にはできます。しかし、エンジニア領域ごとにできない、一人でできる、教えられるくらいできる、等の尺度となっていて、主観も入りえます。
経験の中で、このくらいであったらできる、つまり売れると見做されることはあるでしょうが、はっきりさせるのは難しい面があります。
よって、会社として少し明確になるように取り決めが必要ということになります。
実績はボーナスに反映されることが多いでしょう。しかしエンジニアは稼働により売り上げとなるため、実績といっても単価×時間で決まってしまいます。
ただ、実際は案件の関わり方によって、難易度の高い仕事と低い仕事があり、よく見ると易しい仕事ばかりをしている人が出てきたりしてしまいます。
案件の難易度というものもありますが、案件の中で発生するちょっとしたタスクの中でも難易度は発生します。
技術的な難易度もあるでしょうし、コミュニケーションの難易度もあります。
つまり、同じことを継続してやっているかのように見えて、実際はところどころで難易度の大きく異なる仕事を実行しています。そのことも踏まえて、実績は見られるべきです。
日常のマネジメントが最も影響を及ぼす
会社として評価の仕組みがあり、運用されていることは大前提となります。
しかしそれだけでは、離職には少ししか影響しません。
離職に影響する要因として、報酬面、キャリアビジョン、人間関係、労働環境、そもそも合っていない、といったことが一般的に挙げられます。
人事制度は、上位2点はカバーできますが、それ以外は制度ではなく、現場そのものの話です。
これらの要因は一部でしかありませんが、大部分を占めているとは思います。これらの一つひとつを解決すれば離職は防止できるということではありません。
これらすべてが解決されるように現場がマネジメントされていることが重要です。というのは当人にとって影響が大きいのは現場のマネジメントだからです。
離職を出さない重要な2つのポイント
離職理由は様々な面が挙げられますが、結局はいるよりやめたほうが自分にとってよいと判断したからです。より給料の高いところに転職することあるでしょうし、別な仕事にすることもあるでしょう。
残念ながら、同じ会社であってもある現場ではやめる人が多く、ある現場では全く辞めないという現象が起きます。先に説明した原因を一つひとつ比べても、その原因は見えてきません。
では、実際は何が原因となっているでしょうか。
当人の選択には、当人の価値観が入ってきます。評価制度があり、高く評価されていても自分の価値観に合わなければ、辞めてしまうでしょう。
しかし、辞めて別なことを行うのは、普通の人はハードルが高いです。そのままのほうが楽です。それでも辞めるというのは、価値観もありますが、もう一つ別な要因もあります。
私が重要と考えているのは、個人のポジションです。
会社がポジションを提供できていれば、労働環境が悪いなどの要素があったとしても、達成と貢献が感じられるものです。
ポジションのマネジメントが難しいのは、一定ではないからです。
あるチームに一人新人が入ってきたら、全く別なチームになります。誰かに教育係になってもらえば終わりではありません。教育係以外の人もポジションが変わります。
また、ポジションはプロジェクトの開始時期や終了時期等のシチュエーションでも変わってきます。
常に個々の人のポジションが最適にするように、日常からマネジメントされている状態が、だれも辞めない状態です。
ちなみに、ポジションとは、人それぞれの未来も含みます。つましキャリアビジョンを踏まえて今できる経験というものも要素として、マネジメントされていくということです。
個々人の性質と変化するシチュエーションをトータルで考慮しながらマネジメントされると離職しない
仕事をしていくうえで、人の性質を4つほどに分類します。
人の思考は偏りがあり、様々な分析手法はありますが、ここでは4つに分類します。
偏りはあるのでしょうが、この場合それぞれがマネジメントとして考慮されるべき点です。一つに偏ってしまっては、対処すべきことが漏れてしまい、メンバの不満がでます。
4つとも会社としてマネジメントされていれば、仕事の成果と離職防止の両方を得ることができます。
また、シチュエーションにより強調されるべき点が異なってきます。
未来を描くタイミング、計画するタイミング、調査・発見・実行のタイミング、協業して進めるタイミングなど場面により強調されるべきことが違います。状況に合わせたマネジメントも必要となってきます。
プロジェクト×保守運用統合マネジメントでのありがちな問題
管理に時間を多大に要してしまう
マネジメントという言葉には、ただ単に進めているだけでなく、外から進められていることが見えるようになり、何かあれば対処するという仕組みを付け加えるという意味が入っています。
付け加えられているので、当然仕事は増えるというイメージとなります。
管理という言葉に置き換えると、そのニュアンスはさらに強くなります。
マネジメントしていくもしくは管理していくというのは、工数がかかることではありますが、成果との見合いを見極めることと、成果が出るようやるべきことは効率的に行うことが大切です。
評価の仕組みが複雑になりすぎてしまう
エンジニアの評価にあたっては、持っている技術スキルと遂行するための社会人スキルのようなものとがあります。
そして、その成果は、スキルの高さのほかに、それによって導き出される実績としての成果というものがあります。成果は評価されるべきですが、既に持っているスキルとスキルの伸びしろを評価されるのが実態ではないかと思います。
また、現在担当している領域やその難易度も関係してきます。難易度が低いので成果が出やすかったということもあるでしょうし、その逆も可能性としてはあります。
成果だけではなく、プロセスも評価すべきという話もあります。
そもそも、その仕事はジョブとして定義されているので、それをこなせる人がしかるべき報酬をもらって実行すればよい、という話もあります。その場合は、ジョブを定義するのが苦労を要します。
これらのことを制度としてきっちり決めて、運用していくには、仕組みづくりも大変なことですが、それらの要素を記載して、チェックすることの大変さも大いにあります。
考えれば考えるほど、仕組みは複雑になっていきますが、考えないと実態とあまりにも合わないものであり、感覚的なものとなってしまいます。そのあたりをうまく見極めることが重要となってきます。
一定レベル以上が評価できない
評価の仕組みが作られたときに、一定レベルの範囲に当てはめます。
そうすると一定レベル以上に値する人がいても、一定範囲内になってしまいます。
これは、ある仕事の成果がそうであったということもあれば、やるべき仕事を超えて実行できたということもあるでしょう。
範囲と実績といった縦と横で面積として評価したとても、実際は3次元となっていて表現しきれていません。
したがって、細かく定義しすぎてもその範囲を超えてしまうことは出てきますので、一定程度の広く解釈できる部分を持たせたほうがよいとも言えます。
できる人もできない人も辞めてしまう
現在は人材流動時代と言えます。
特にIT人材については、需要がありますので、自分の意とする方向に、若くてもベテランでも移ることは可能です。
元居た会社に戻ることすらも、し易い時代となってきています。
そのような中で、誰も辞めないというのは非常に困難な時代とも言えるでしょう。
辞める人はどのような人でしょうか。
できる人でしょうか。できない人でしょうか。
おそらくどちらもあるでしょう。できる人は辞めてほしくありません。
できる人をコスパよく使えれば一番いいです。しかし、その人からすれば、もっと報酬ややりがいを高く持ち、思いを募らせる可能性があります。
一方、できない人は、コスパが低いのでいなくなったほうがいいと言えるでしょうか。
現在は、辞めた人の分を採用するのに多額のコストがかかります。確かにコスパの低い人をいつまでも抱えていると、チームのパフォーマンスに影響が出る可能性があります。しかし、その人のパフォーマンスが良くなるのが一番いいに違いありません。
プロジェクト×保守運用統合マネジメントで本当にやるべきこと
プロジェクトと保守運用という異なるタスクを並行して進めるのは困難な面はありますし、プロジェクトがよく評価されて、保守運用は低く評価されると、公平感に欠きます。
実際保守運用は簡単というわけでもありません。
そのような環境の中で、マネジメントを有効にしていくには、それぞれの人がうまくバランスよく仕事ができるようにしていくべきです。
管理をする手段はありますが、ただ管理していると手間だけ増えてしまします。
本質は全体をマネジメントすることということになります。
日々状況は変わりますので、日常からマネジメントされていることが望ましいです。
当たり前のようですが、日常そして目の前のことが一番離職に影響します。
結果、成果と離職なしの状態の両面を達成させることができるでしょう。



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