
認識限界について説明します。
人はそれぞれ事象を捉える時に、認識している範囲に限界があります。
限界の外は認識しないため、何の行動にもつながりません。
実際現在置かれている状況下でのやるべき仕事としては、認識外の範囲にも存在するという状況だとします。
本来であれば、認識外の範囲であっても、認識すべきことややるべきことがあると思って、範囲を広げていきつつ仕事を進めるべきです。しかし、ITの中味や影響範囲が見えづらかったり、範囲を広げることには頭を使ったり、多くのコミュニケーションが必要だったりしますので、行動に出ないということになってきます。
認識と一言でいっても広く、現在の事象や構造に対する認識、時間軸を含んだ認識、他人との関係における認識といった様々なものを含みます。
認識に限界ができてしまう基本的な行動の特徴
数が多いというだけで分からなくなってしまう
まず、単純に数が多ければ、認識の限界をすぐに超えてしまいます。普通の人は4,5項目しか認識できないでしょう。
たくさんの事象に対して、1とつずつ挙げていくとしたら、1,2,3・・・・・その他いっぱい、となってしまうでしょう。
その他いっぱいとなる直前の数は、4か5ぐらいと思っておいたほうがいいです。
よほど詳しい領域でなかれば、100個も覚えていられないです。
その人が認識できていない、ということもありますが、事象を人に伝えるという場面においても同じようなことが起きます。
たくさんの事象をたくさんのまま伝えても、他人は4,5個しか認識しておらず、その他いっぱいと認識してしまい、結果認識されていないということになります。
これらの基本的な行動はコミュニケーションの場面でも問題となることが多いです。
ITの現場においてはこのようなことが起きます。
予約システムの機能変更要求に対して影響を教えてほしいということを問うたところ、エンジニアから機能と言ってもたくさんあるのでわからない、という答えが返ってきました。どの機能に影響するのか逆に教えてほしい、ぐらいの勢いで返されてしまいました。
要求が明確になっていないことはわかりますが、ゼロ回答というのも問題はあるのではないでしょうか。
たくさん機能があるのもわかっていますが、予約システムというからには予約に関わる機能がメインなのは明らかであり、そのほかのメンテナンス機能などはこの場面で重要になるとは思えません。
いずれにしてもコミュニケーションロスが発生し、いたずらに時間を要してしまいました。
どちらが悪いということでもないのですが、たくさんだからわからない、というのはなく、いくつかの主な機能とその他について分類できていれば、少し議論は進むのではないかと思います。
細かすぎて本質が見えない
数が多いことそのもので、認識の限界を超えるのですが、一つひとつが正しく認識されていても、全体としては認識できないという状況に陥ることがあります。
多くの項目を扱っていて、しかも漏れなく対応しなければならないのであれば、しっかりと一つひとつを認識しなくてはいけません。しかし全体をただ単に並べただけでは、何も見えませんし、何もわかりません。
それは、個を見て本質を見ていないという現象と言えるでしょう。
本質や目的を見失ってしまったら、それらの情報は一つひとつは意味はあっても、全体としては意味を持たなくなってしまい、共有しても何も伝わらないことになります。
IT仕事においては、まじめなエンジニアほど陥ります。
ITの現場においては、まじめな人が多いので多くのものを多くのまま捉えて、漏れなく行動していることが見受けられます。
一つの登録漏れが大きな影響をもたらすこともあるので、慎重な行動になるのもわかります。
作業の見積を出してもらった際に、30項目ほどが並んでいました。作業を分解し、正しく見積もったということでしょう。ところが、他人から見ると、全体として正しいのかがわかりません。
30項目ほどになっているのであれば、やはりいくつかに分類できるはずですし、大項目単位で認識相違がないことのほうが重要となります。個々の項目を見ていると、実は大きな意味で漏れているものに気づかなかったりします。
文字にしたときの認識の限界
ITのプロジェクトなどでは決めごとを議事録として記録することがありますが、事象を文字として表現したときに、実はほんの少ししか認識できていないです。
わかりやすい文章にしたとしても、その場で起きている事象や取り巻く関係する事象を含めて認識するには文字にしたら欠落してしまうことが多いです。
できる限り後からわかるようにしたり、他人でもわかるようにしたりすることが対策として必要ですが、それは当たり前のことで、ここで把握すべきことは、所詮ほんの一部しか伝えることはできない、ということです。
すなわち、他人に文字で伝えて合意したとしても、100%は合意できない、という限界があるということです。
マネジメントにおいては、限界により不完全である前提で考えておいたほうが、無難です。
進むべきかどうかは、比較しないとわからない
ITの特にシステム開発プロジェクトの場面においては、大なり小なりどのような方針や仕様で進めるかという場面に遭遇します。
その際に、すんなり決まることもありますが、決定的な判断基準がなければ、なかなか決められない場面も多く遭遇します。
プロジェクトとなると、今まで経験したことがない、ということもあり、判断がつかず期限に影響してしまうこともよくあります。
このなかなか判断がつかないというのは、ITに限らず起きることなのですが、ITにおいては見えないものを決めていくので、非常に細かい仕様の話においても決められないことがあります。
この際に必要なので比較対象です。
比較対象があれば、人は物事を決めやすいです。
認識している範囲が十分であれば決断もすぐできるでしょうが、認識の範囲を超えた場合の手助けとなるひとつとして、比較対象が有効となります。
同じように認識の限界により決断できないということで起きる行動として、ちょっと大きめの話になると決断できないという特徴があります。この点についても、大きい範囲で見えるようにすることや、同じような大きな話の比較対象があると変わってきます。
認識の限界が仕事への行動として現れるもの
未経験仕事は半分以下で見積もってしまう
仕事を期限どおり完遂するにあたっては、そもそも仕事のボリュームを見極めないといけません。ITの現場においては、作業を見積期限までに遂行する場面が多いため、逆に問題も多く発生します。
仕事がいつまで経っても終わらない、という現象に遭遇します。
ひとつの原因としてはボリュームを誤ったということにあります。そして、ボリュームの見極めができていない原因は認識の範囲外の見積ができていなかったからということになります。
未経験の仕事であれば、認識限界は当然小さいものとなり、認識範囲外が大きくなっているはずです。そして未経験の仕事の多くは、本来やるべきことの半分以下で見積もってしまいます。
これはITそのものの特徴からもくるものです。ちょっとした対応であればやろうと思えばすぐにできてしまいます。ところが、実際の作業は、関係者に確認し合意の上で、設計し、テストしたうえで、さらにうまくいかなかった時の対応までも考えて、最終的に対応する、という段取りだったとすると、半分どころか、2割程度しか認識していないこともあります。
未完成であることに気づかない
仕事がなかなか終わらない他の原因として、そもそも何をやるのかという認識が完成まで達しておらず、未完成であることに気づいていないことがあります。
気づいていないのは、少したちが悪いです。未完成であるにも関わららず放置になってしまうからです。
ITは見えづらいところがありますので、完成イメージもつきづらい場面があります。よって、気づかず、後になって慌てることがありますので、気を付けないといけません。
小さい範囲でしか考えていないと影響がわからずコストが膨らむ
ITの仕事の場面では、ITが対応するのか、ユーザが対応するのか、という場面が発生します。ITが対応しなければ、ユーザがデータ登録をし直したり、といったことが発生することとのトレードオフの場面になるわけですが、IT側は、影響をよく考えないと、結果的に膨大なコストを掛けることもあります。
これはやはり認識が一部に閉じているから発生しまうことです。
ITをリリースするにあたって、旧システムのデータ移行をめんどくさいので行わなかったとします。かなり乱暴な言い方ですが、極端に言うとこのようなことは現実に起きています。
狭い範囲で判断された結果、何が起きたかというと、100人のユーザが日々データを入れながら導入されたITを利用することとなりました。
あまりに大変だということで、アルバイトを雇ってまで対応することとなりました。結果コストがかかってしまうこととなったわけですが、そこまでの影響を認識していなかったために起きた行動だったわけです。
自分でやるべきことを自分で決められない
少し切り口が違う認識限界について触れたいと思います。
そもそも自分がやるべきことを認識していないとどういうことが起きるでしょうか。やるべきことがわかっていないということは、当然やらない、ということになります。
本当はやるべきことをやっていないということは、後々問題が発生します。
では自分がやるべきことは、なんらかの対処を行うことで、認識できるようになるでしょうか。それはできます。
しかし、認識できてもやはり進まないという状況に陥っていることが多々あります。
その理由は、ある程度やる範囲が認識されたとしても、自分でやるべきことを自分で決められないからです。
やるべきことが落ちていて、率先して拾いに行くというスーパーパーソンはほんの一握りで、自分では決められないという状態となるのは、普通のことです。



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