
ここまで現日常における保守運用マネジメント全般の説明をしてきましたが、ここで保守運用の締めくくりとして、統合マネジメントを紹介します。
日常における保守運用マネジメントとは
統合マネジメントを説明する前に、保守運用マネジメントとは何だったか改めて見てみましょう。
保守運用領域のマネジメントはこのとおりです。
- 稼働・障害・保守マネジメント
- 保守契約・ライセンス契約マネジメント
- バージョンマネジメント
- 問い合わせマネジメント
- セキュリティマネジメント
- 変更要求案件マネジメント
稼働・障害・保守マネジメント
継続して稼働することとそうしていくための活動をマネジメントします。
障害が発生すれば復旧までの状況をマネジメントしていき、恒久対策までフォローしていきます。
日常保守については、事前および事後対策を着実に実施していくようマネジメントします。
保守契約・ライセンス契約マネジメント
継続的な契約を問題なく実施していくために、マネジメントしていきます。
バージョンマネジメント
ITにおける全般的な対象物に対し、最新を正しく認識し、変更を確実に実施していけるようマネジメントしていきます。
問い合わせマネジメント
非定型な問い合わせに対して、問題の原因となったり、改善の種になっていたり、していないか、日常的に確認していきます。
セキュリティマネジメント
ITで扱っている情報の資産価値を把握し、リスクに応じたセキュリティ対策を実行するようマネジメントしていきます。
変更要求案件マネジメント
主にユーザからの変更要求に対して、1件1件を案件すなわちプロジェクトと捉え、変更を確実に反映できるようマネジメントしていきます。
日常における保守運用マネジメントで最も重視すべき点とは
日常における保守運用において、様々な視点でのやることがあります。
それらに共通していることが3つあります。
一つは、既存のITを対象としたものであること。
二つ目は、基本的には同じ人たちが実施していること。
三つ目は、それぞれやるべきことの状況を把握し、それぞれ達成しなければならないこと。
様々マネジメントしていくことになりますが、ある観点に着目して他の観点を忘れてしまってはいけません。
すべてがうまく進んでいないといけないということになります。
そして、同じ方向に向かって進んでいればいいですが、一つひとつは小さくても、同じことが繰り返されるわけではなく、環境は常に変化しています。
そのような中で日常を過ごしていく中で、いつか非日常が現れます。
日常で一杯いっぱいになっていると、非日常を受けれることなどできません。
したがって最も重視すべきことは、日常をうまくマネジメントし、いつでも非日常を受け入れられるようにすることです。
日常保守運用の統合マネジメントとは
日常運用でマネジメントすべきことは、ここでは6つに分類しましたが、切り口を変えればさらに多くあるかもしれません。
それらは次に非日常が現れても、乱されることなくうまく実施されていくべきです。
そのために、一つひとつもマネジメント手法ももちろん大事ではありますが、統合マネジメントがさらに大事となります。
大企業できちんとしたIT組織があるのであれば、それぞれの担当がうまくこなしているかもしれませんが、ITスタッフやマネージャが足りていないのであれば、すべてを限られた人でうまくこなさないといけません。
そのためにも統合されていくことは重要なマネジメントとなります。
日常保守運用の統合マネジメントの手順と手法
日常の保守運用における統合マネジメントの手順と手法はこのとおりです。
- 1年間の計画を立てる
- 2実施すべき項目をリスト化する
- 3実施状況を把握する
- 4個別項目へテコ入れする
- 5全体傾向を把握する
- 6メンバのリソース状況を把握する
- 7全体としてテコ入れする
- 8次年度の計画を立てる
年間サイクルとしては1に始まり、順次実行しつつ年度末になれば8の次年度計画までとなります。
2から4は個別実施項目の実施に関するマネジメントとなります。実施項目が増えれば2に追加となりますので、定常的に繰り返すことになります。
5から7は個別実施項目を全体として見たときのマネジメントとなります。
個々の進捗だけを見て課題や問題の本質を勧化手もわからない場合があります。ここの問題ではなく、チームとしての問題である可能性があります。
5から7のサイクルは2から4のサイクルと同時に行いますが、本格的に棚卸し実行するのは、もう少し長いサイクルとなるのが通常です。
年間の計画を立てる
保守運用について年間として何が実行されるべきものかを計画します。
計画しなくても、継続してやらなければならないことはやらざるを得ないし、突然発生するものは仕方がないし、計画のしようがない。
と思っているのであれば、それはマネジメントされていない状況です。
個別の計画としては、まだやることがわかっていなかったとしても、年間計画としては、過去の傾向や予想からどのくらいの規模の業務があるかを計画します。
計画の方法としては、2つの分類観点があり、特性に見合った年間計画とします。
| 項目 | 発生分類 | 計画分類 | 年間計画の作り方 |
| 稼働 | 定常 | 固定 | 監視などの定常作業と言えるため固定の計画とする |
| 障害 | 非定常 | 固定 | どのくらい発生するかわからないが、いつ起きるかもわからないので、年間で一定規模計画する |
| 保守 | 定常と非定常 | 固定 | どのくらい発生するかわからないが、いつ起きるかもわからないので、年間で一定規模計画する |
| 保守・ライセンス契約 | 定常 | 固定 | 計画的に実施しするものと障害起因のものがあるため、決まってはいないが、一定規模計画する |
| バージョン | 非定常 | 変動 | 変更に起因するため非定常となるが、計画は一定規模の予測値とする |
| 問い合わせ | 非定常 | 固定 | 発生が予想できない非定常ではあるが、年間で一定規模計画する |
| セキュリティ | 定常 | 固定 | 定常作業と言えるため固定の計画とする |
| 変更要求案件 | 非定常 | 変動 | 一つひとつが個別の案件であり変動となるが、年間としては既に決まっているものと予測により全体規模を計画する |
年間の計画が一旦出来たら、本当に年内に対応できる規模なのかを俯瞰します。
難しいのであれば、先送りにできるものはするなどの計画調整を行います。
実施すべき項目をリスト化する
計画時は予想などにより大まかな規模感のみの項目が存在します。
実施にあたっては、具体的な実施項目として明確になったものについてリスト化され、マネジメントされていくことになります。
統合マネジメントにおいては、実施すべきすべてがリスト化され、状況がわかるようにします。
個別の実施項目に対して、実施すべき期間と実施担当を明確にします。
実施状況を把握する
リスト化された実施すべき項目は、日常的に実施状況を把握します。
例えば、週次ミーティングにより、項目ごとに実施状況を共有します。
その際に最も確認すべきは、進捗なので、項目に対する直近の実行状況、実施にあたっての課題、今後の予定を最低限把握できるようにします。
そうすることで、滞っていることがすぐにわかりますし、その原因も課題で予想がつきます。
やってはいけないのは、今日○○した、明日△△する、などといった事象だけを見ることです。
これは日記にしかなっていません。しかし実際作業をしていくと日記になってしまうことがよくあります。
重要なのは、予定に対して今どういう状況かという観点です。そして今後何が予定されており、ゴールにたどり着けるかが簡単にわかることです。
個別項目へテコ入れする
リスト化された個別項目の状況を見ていったときに、個別に的確に報告されていれば問題がすぐに察知できるはずです。
問題を察知した場合は、現状を把握し、対策を施していきます。
全体傾向を把握する
全体としての現状断面把握
個別の項目については、それぞれの状況を把握し、問題があれば対処していきますが、実は全体として問題の傾向があるかもしれません。
リスト化されていることのメリットは全体としての傾向を分析できることです。
例えば、担当が複数いたとしてたら、担当別に見て、特定の担当が遅れていないかが見えてきます。
あるいは、分類別に見て、ある分野が滞っていてるのは、他の分野の仕事が盛り上がっていて優先順位が下がってしまっているからか、という仮説が立てられます。
遅れているものだけを眺めてみると、実はある技術的な問題が解決できず、すべて根本的には同じ原因で遅延していた、ということもあるかもしれません。
全体としてのトレンド把握
ある時点での状況の他に、トレンドを見ることでも全体の状況を把握できます。
毎週リストを共有しているのであれば、週ごとの問い合わせ件数という観点で見れば、増加傾向か減少傾向かがわかります。あるイベントにより一時的に増えていることもあるでしょう。次のイベントが把握できていれば、予測が立てられます。
障害に対する恒久対策案件が捌けているか、変更要求案件が増えているか、といった案件としてのトレンドも把握します。
メンバのリソース状況を把握する
メンバのソース状況とは、メンバに仕事が割り当たっているかということとメンバごとの負荷を見ることです。
メンバが一人だったとしても、仕事を並べてこなせるかを見極めます。
そのためには、仕事が定量化されていないとわかりません。仕事ごとに予定工数を把握します。
年間の計画では、詳細がわかっていない項目については、塊で工数を予定しておきます。実態を見ながら実態にあるように調整していきます。
そうすることで、実態としての仕事の負荷がわかります。
もし、期間がずらせない作業が積み上がってしまい、担当するメンバが少なかったら、普通に考えると実行できないということがわかります。
メンバは社内の内部メンバだけとは限りません。外注のメンバもいるケースもあるでしょう。
外注に関しては、月に何件という契約をしているケースもあるかもしれませんし、派遣として社員と同等に仕事しているかもしれません。
いずれの場合も、全体としてのマネジメントはしていかないといけません。
もし、3カ月後仕事が急増するとわかってれば、今のうちに外注にヘルプを頼むなどの対策を早めに実施します。
全体としてテコ入れする
全体として問題を察知したら、テコ入れします。
問題の部分について、現状把握し、原因となっている部分を探ります。
原因を掴んだうえで、対策を実行していくことになります。
問題、原因、対策の例を紹介します。
| 問題 | 原因 | 対策の例 |
| ある担当分が遅延している | 仕事が一人に偏っている | 担当割を見直し平準化する |
| 案件が増加傾向にある | 事業部門での改善活動が進んでいる | 担当割をし、それでも済まなければ外注を検討する |
| ある領域の案件が滞っている | 共通の技術的な問題が対応できていない | 問題解決の優先タスクをつくって対応する |
| 一部案件が遅延している | 割り込み案件が発生して影響を受けている | 優先順位の見直しを行う |
| ある担当分が遅延している2 | 当該担当のスキルが足りていない | 担当を替えるか、ヘルプに入る |
| 着手できていない案件が増加傾向にある | 今進めている案件で一杯いっぱいである | 全体の優先順位を見直す |
| 期末に変更要求案件が急増している | 予算の都合で期末に偏っている | 次期に回せるものを交渉する |
原因は正しく捉えないと対策は有効となりません。言葉で言うのは比較的簡単ですが、実際現状を動かすのは、生身の人間ですので単純ではありません。また原因は複合要因であることも多く、一つの原因だけではなく、対策も複数実行しないと解決しないかもしれません。
リストは全体を把握するためのツールでしかなく、実際に全体を把握するのはそれ相応の洞察が必要となります。
しかし、リストで状況を把握することが習慣化されることで、関わる人たちの洞察力と解決力が上がってきます。
次年度の計画を立てる
状況を把握し、問題があれば対策を取りつつ、定常業務も非定常業務も予定どおり進めていきます。
1年経ったら次の年度に入っていきますので、また年間の計画に戻ります。
もちろん、全体計画を見直すのは1年に一度でなくてもよいです。
毎月見直していれば年度末に慌てる必要はありません。4半期に一度先々を見据えて見直していければ、タスクの平準化や問題解決の早期化により、結果的に予定以上の案件をこなしていることになるでしょう。
日常保守運用の統合マネジメントにおけるありがちな問題
問題が想定以上に複雑だった
保守運用統合リスト上で問題を発見したため対応しようとしましたが、問題が実は複雑であり、簡単には解決しないことがあります。
IT現場のマネジメントは人が関わっている以上、仕組みを習慣化してもやはり複雑な問題は出てしまいます。
ある担当案件が進んでいないという事象があったとします。それでは、対策としては他の担当に割り振ろうとします。
他の担当はその案件をやりたがりません。その理由を払しょくしなくては、割り振りをし直すだけでは解決しません。
やりたたがらないので、元の担当のやりかけに問題があるとか、技術面での難易度の問題とか、あるいは他の関係者にやりにくい人がいるとか等様々なものをあり、しかもはっきり言わないかもしれません。
本質を見極めるのは難しい側面もありますが、目的に向かって進めることを優先に、原因を探っていき最善策を打っていきたいところです。
気づいたら定常作業が実行されていなかった
定常作業に位置づけされている稼働、保守、契約、セキュリティ等については、日常的に計画したことを実行しているはずです。
ところが、何か強制的に実行しないと問題が発生するようなことでない限り、やらなくても日常に問題がないものであれば、現場で先送りになってしまいがちです。
組織として決めたことであれば、実行されることが当たり前とも言えますが、現場は非定常の作業と並行して行っており、なおかつ非定常作業は突発的に増えることもあるため、当たり前にならないこともあります。
リスト化してマネジメントされた状態にしたとしても、定常であるがゆえに見逃されることもありますので、注意したいところです。
リスト上の情報が単純すぎて誤解釈していた
リスト上では情報を簡潔に把握し、問題があれば察知し、対応していくことが求められます。
簡潔に、というのは短ければいいということではありません。
問題がなければ問題なしという共有内容でも問題ないことはありますが、課題に対して、対応中ということだけを共有しても、情報が単純すぎます。
リスト上の情報は個別の問題把握と同時に、全体としての問題把握が必要です。
よって、情報量は簡潔にといっても、知りたい情報が最低限ないと問題を見逃してしまいます。
リスト上の情報が多すぎて本質を見失った
逆に、リスト上の情報が多すぎることも、ありがちなことです。
個々の情報について、今やっていることを詳しすぎるほどに報告してしまうケースがあります。
確かに直面していることは多くの情報があるでしょうが、全体の状況を把握するという意味においては、情報が邪魔になってしまいます。
さらに、そのような記載に限って、本質はよくわからないものになっています。
だから何が問題なのか、だからどうしていくべきなのか、といったことに繋げられるように情報を整理していきたいです。
そもそも計画時点で破綻している
様々なマネジメントすべき項目について、全体として計画し、変更や追加を受け入れながら日常的に進めていくということを説明してきました。
しかし、そもそも全体として計画したときに、やれるだけ見込みが立たず、計画がある意味破綻しているということがあります。
計画には予測値も入っているため、期待値となることもあり、なんとなくやれる計画に収まります。
計画は上振れすることも下振れすることもあります。
難しいことではありますが、計画をなんとか精度を上げ、実は破綻していた、ということは避けたいです。
実施していくうちに、計画どおりにできないことが判明する
計画したら、実施できる範囲を超えていたということがわかることは、ある意味救われています。
実施できるという計画であったが、やっていくうちにやっぱりできなかったというほうがたちが悪いです。
それは主に、計画時の見積工数が少なかったことによります。
定常、非定常、固定、変動という要素でそれぞれ見積もりや予測を立て計画していきます。しかし、やはり精緻に見積もるのが難しい面は必ずあり、リスクを見極められていないことが往々にしてあります。
日常保守運用の統合マネジメントで本当にやるべきこと
日常保守運用での統合マネジメントの狙いは、日常をマネジメントして出たとこ勝負ではなく、淡々とこなしていけるようになることです。
そして、最も大事なことは、日常がしっかりマネジメントされた状態になることで、非日常になっても問題ないよう準備されていることです。
既存のITが多かったり、複雑であったりすると、日常を淡々と、といっても、そううまくいかないことはあります。
予測と言っても、予想外のことが起きてしまったり、予定した工数を超えるリスクが発生し工数が足りなかったり、途中で予定外の案件が発生したりと、精度を高く保つことは簡単なことではありません。
また、最初の計画段階において、そして実行の途中段階においても、洞察により見通しや変更影響への対応などが可能となってきます。
ではその洞察は超人でないとできないことでしょうか。
確かに、超人的な洞察力を持った人がいれば助かります。
しかし、際立った能力の高い人がいなかったとしても、チームとしてマネジメントが習慣化されれば、事態は落ち着いてきます。



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